電気設備の安全管理に携わる皆様、そして事業活動で電気を使用される全ての皆様へ。

近年、高圧工事や高圧受電設備の不適切な管理による波及事故が後を絶ちません。波及事故とは、自社の電気設備の事故が電力会社の送電系統に影響を与え、広範囲の停電を引き起こす重大な事態です。これは、自社の事業活動停止はもちろんのこと、地域社会全体に大きな混乱と損害をもたらす可能性があります。

今回は、実際に発生した波及事故の事例を詳しく解説し、その原因と対策、そして事故を未然に防ぐための重要なポイントを改めて皆様にお伝えします。

繰り返される波及事故:その実態と影響

過去に発生した波及事故の事例を見ると、その原因は様々ですが、共通して**「適切な管理と対策の不足」**が挙げられます。

【事例1:経年劣化したケーブルからの警鐘】

ある事業所では、長年使用されていた高圧ケーブルの絶縁が劣化し、地絡事故が発生しました。本来であれば自社内の停電で済むはずでしたが、保護システムの不備から電力会社の遮断器が動作し、周辺地域が広範囲に停電するという事態に。定期的な点検を怠ったことが、地域全体に影響を与える大事故に繋がってしまったのです。

【事例2:キュービクル内の小さな火花が広範囲の暗闇へ】

また、ある工場では、キュービクル内の高圧機器の不具合が原因で短絡が発生し、火災に至りました。この事故も、初期対応の遅れと保護システムの不備が重なり、電力系統にまで影響が拡大。周辺の住宅や商業施設も巻き込む大規模な停電を引き起こしました。日々のメンテナンスの重要性を痛感させられる事例です。

【事例3:建設現場の不注意が招いた広範囲の混乱】

建設現場では、埋設された高圧ケーブルの存在を十分に把握しないまま掘削作業が行われ、ケーブルが誤って切断されるという痛ましい事故が発生しました。この一瞬の不注意が、周辺地域一帯の電力供給をストップさせるという深刻な事態を招きました。事前の調査と情報共有の徹底がいかに重要であるかを物語っています。

これらの事例は、決して他人事ではありません。あなたの事業所でも、同様の事故が発生する可能性を常に意識する必要があります。

波及事故を防ぐために:今、私たちにできること

波及事故は、適切な対策を講じることで未然に防ぐことができます。以下のポイントを改めて確認し、日々の業務に活かしてください。

1. 法令・規程の遵守と意識改革:

  • 電気事業法をはじめとする関係法令、そして社内の保安規程を遵守することは当然です。
  • 作業に関わる全ての人が、波及事故の危険性を認識し、高い安全意識を持つことが不可欠です。

2. 定期的な点検と適切なメンテナンスの実施:

  • 高圧受電設備やケーブルは、定期的に専門家による点検を行い、劣化や異常の早期発見に努めましょう。
  • 点検結果に基づき、適切な時期にメンテナンスや更新を行うことが重要です。

3. 作業前の徹底的なリスクアセスメント:

  • 高圧工事を行う前には、必ず作業手順やリスクを評価し、安全対策を講じましょう。
  • 埋設物の確認や作業範囲の明確化など、事前の準備を怠らないことが重要です。

4. 電気主任技術者との密な連携:

  • 電気設備の保安に関する専門家である電気主任技術者の指導や助言を仰ぎ、適切な管理体制を構築しましょう。
  • 日常的な相談はもちろん、工事計画段階からの連携が事故防止に繋がります。

5. 緊急時対応の準備と訓練:

  • 万が一、事故が発生した場合に備え、迅速かつ適切な対応ができるよう、手順書を作成し、定期的な訓練を実施しましょう。
  • 電力会社との連携体制を構築しておくことも重要です。

地域社会への責任:波及事故ゼロを目指して

波及事故は、私たちの事業活動だけでなく、地域社会全体に大きな影響を与えます。停電による経済活動の停滞、交通機関の麻痺、医療機関への影響など、その ущерб は計り知れません。

私たちは、地域社会の一員として、波及事故を絶対に起こさないという強い責任感を持つ必要があります。

今一度、自社の電気設備の管理体制を見直し、安全対策を徹底してください。小さな油断や不注意が、取り返しのつかない事態を招く可能性があることを肝に銘じ、**「波及事故ゼロ」**を目指して共に取り組んでいきましょう。

電気設備・高圧工事のお困りごとは専門家のキュービクル119にまずはご相談ください。